
大海原が閉じ込められた湯のみ
それにしても、いまにも動き出しそうな、清鱗の魚たちの躍動感はどこからきているのでしょうか。よく見ると、目玉がふたつある魚の左右の目の向き違った方向を見ています。外敵がいないかどうか、エサがないかどうか、いつも周囲に目配りをしている魚たちの姿が見事に表現されています。
この湯のみは、ろくろを使い手でひいた渦巻き状の模様があるのが特徴ですが、この模様は大海原そのものが表現されています。海中を自由自在に泳ぎ回るイカ、海底を素早く横歩きをする蟹、飛び跳ねる鯛など、魚たちがいきいきと描かれています。清鱗は、この臨場感を出すために、清鱗独自の手法を編み出したのです。
左右の目の向きを変えることにより、見事に躍動感が出ている。
作品と対話をしながら、リズムで線彫りと目玉付けをやってしまい、知らないうちに大量の作品を造ってしまうというほど無心に、人間業を越えた見えない力によって作品をつくる清鱗も、最初は毛筆で水墨画の絵付けをしていました。
「絵付け」は、織部、鉄絵、銅、辰砂(しんしゃ)、染付けの素朴な色合いの5色で、深い味わいの色合いを作り出しています。
毛筆による絵付けだけでは、どうしても表現しきれないものを感じた清鱗は、表現者としてのやむにやまれぬ気持ちを粘土に込めて、表面を直接削って描く「線彫り」してみました。線彫りは、最初は釘など色々なものを試してみましたがどうしても柔らかいタッチを表現したくて、いろいろと試行錯誤して、弾力性のあるナイロンの箸にたどりついたといいます。
しかし、まだ魚たちの生命感に物足りなさを感じた清鱗は、魚たちに命を吹き込むために、目玉をつけるようになりました。そうしたら、一匹一匹の魚たちが、皿の上で飛び跳ねるようになったといいます。
これが、飛び跳ねているような躍動感をかもし出す線彫りと、「目玉がないと自分の作品ではない」という清鱗の目玉のはじまりです。
また湯のみのつけられている縞模様は、大海原そのものを表現するだけでなく、もうひとつ、重要な役割をはたしています。
手で持つ部分が少しへこんでいるので、実に持ちやすいのです。両手で包みこむように、この湯のみを持ち上げてみてください。どの部分をどのように持っても、ぴったりと手になじむはずです。
「絵付け」は、織部、鉄絵、銅、辰砂(しんしゃ)、染付けの素朴な色合いの5色で、深い味わいの色合いを作り出しています。
日常の食卓において、机の上を泳ぎまわるユーモラスな魚たちと会話を楽しんでください。















