
ひとつひとつに源氏物語の物語がこめられた小皿
5本の線のつなぎ方で52種類もの符号をつくり、「源氏物語」54帖のうち最初の「桐壺」と最後の「夢の浮橋」を除いた52帖の名称がついているのが「源氏香文」です。
この幾何学的な文様に、優雅な王朝文学の源氏物語の物語が、ひとつひとつにこめられています。巻の名前や内容に関係する花や植物などをあしらった意匠が、陶器や着物にいたるまで、古くから用いられてきました。現代に例えるなら、情報量の少ないバーコードではなく、いきなり詳細な解説に飛んでいけるQRコード(二次元バーコード)といったところでしょうか。
この作品は、源氏物語を凝縮した源氏香文52帖から、初音、紅梅、梅枝(うめがえ)、胡蝶、手習の5つを選び角皿セットとしました。
汁がこぼれないよう、四方を持ち上げてある。
私たちのつくっているものはよく「陶芸」と呼ばれますが、陶磁器の芸術である前に実用としての器でなければならないと思っています。器ですから、使って何ぼという世界です。ぜひ、とことん使って欲しいと思います。
小皿の背景に描かれている優雅な源氏物語のそれぞれの場面に思いをはせ、日常の食事を趣の深いものにしていただけたら、作り手としてこんなにうれしいことはありません。
源氏香文52帖より、初音、紅梅、梅枝、胡蝶、手習の5角皿セット。
触ってみて、使ってみないと作品の良さはわからない。
器を使って割れた、欠けた。器なのですからこれは当たり前です。これを恐れるあまり、桐の箱に入れたままにして、食器として使ったことがないというのは、その作品の良さを半分以上知らずにいるということで、実にもったいないことだと思います。例えるなら、新車を買ったけど道路を走ったことがない。カメラを買ったけど写真を撮ったことがないということと同じことではないかと思います。器を両手で包み込むように触ってみなければ、そして実際に食材を盛ってみなければ、その作品の器としての良さはわかりません。人間の五感を全て使って楽しめるものは焼き物くらいしかありません。食材を盛ってみて、初めてわかることがあります。私のつくった角皿を、普段は自宅でも使い、「My皿」としておすし屋さんに持ち込み、いろいろなにぎり寿司を載せては楽しんでいる方がおりますが、同じ皿でも食材によってそのつど趣が変わります。日曜日だけでもいいですから、しまっておかずにどんどん使ってほしいのです。私は、最終的には、作品の持ち主が喜んで器として使っていただいているというのが目標です。「越田さん、この器とてもよかったわよ」と言っていただけるのが何よりも嬉しいのです。押入れの中で眠ってしまうのではなく、生活に根付いた器として使っていただけることが一番ありがたいことです。工芸は、触ってはいけない、近寄ってはいけないという美術作品とは違うものです。










