
純真無垢な童のような透明性を持った薬師如来像
薬師如来は病気平癒などを祈願しての造像例が多く、極楽往生を約束する仏である阿弥陀如来とともに、日本においてはもっとも信仰されてきた如来です。しかし、宮本のこの薬師如来像の表情からは、いかにも仏様という「抹香臭さ」が感じられません。このように感じるのも、彫刻を基礎からしっかり学んだ彫刻家としての完成度が成せる技でしょうか。
純真無垢な童の表情さえ髣髴させる穢れのないこの表情からは、礼拝の対象というより、いつも身近に置き、心の安らぎを与えてくれるインテリアとしてのほうがふさわしい気がします。
宮本の作品は、小さなサイズであるにもかかわらず、お寺にあるような大きな仏像にそのまま引き伸ばすことが出来るくらい、細部までしっかり彫りこまれていることが特徴です。そのため、特に精緻さを要求される頭部は、細部をしっかり表現したいので釉薬をかけていません。衣には、全体的に白寿釉をぬってあり、衣のひだには、白い結晶が付いていて、光の加減できらきらします
陶土も、九谷焼の土である花坂陶土をメインにして調合された土を使っています。それもねばりがあり、手びねりをしやすい旧式の杵つき型のスタンパーを使った土にこだわっています。
衣のひだには、白寿釉の白い結晶がみられる。
どこまでもやさしい慈悲に満ちた表情。
どこまでも深く、どこまでもやさしい表情
とにかく、この表情を感じ取ってください。これは強制することではなく、見た人ひとりひとりが感じることです。作品とは、それを作った作家そのものであると言われていますが、そうだとするならば、宮本はただ者ではないと思ってしまいます。どこまでも深く、どこまでもやさしい。宮本直樹の仏様の表情を見た時、国宝第一号・広隆寺の弥勒菩薩像のあの深遠な表情を思い浮かべてしまいます。善も悪も、生も死も、宇宙に起きているすべてのことを知っているかのような慈愛に満ちた表情。
この像は、礼拝の対象としてはもちろんですが、大宇宙をも貫くゆるぎのない存在をもイメージすることができる、やすらぎと潤いをもたらすインテリアとしてお勧めしたいと思います。









